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いずも空母化、F-35Bは海自、空自どちらが保有するのか、パイロットは

最新の動向

 

ここのところ、いずもの空母化とF-35Bの導入に関する報道がなされています。

現時点で(2018.11.28)F-35Bの導入自体が決定されている訳でもなく、今後、防衛計画の策定や国会論争なども激しくなっていくのでしょうが

 

もし、いずもの空母化とF-35Bの導入が決定した際には、F-35Bを海空のどちらが保有するのか?パイロットは海空どちらから出すのか?などについて魚屋太平の野次馬検討をしてみたいと思います。

 

空母に着艦するF-35B

 

2019.1.5追記

政府は、いずもにF-35Bを常時搭載しないとアナウンスしています。

これを常識的に考えれば、F-35Bは、通常は航空自衛隊が管理して、防空戦闘機として使用し、必要がある場合にはいずもに搭載するという事になります。

常時搭載しないのに海自がF-35Bを保有する理由がありません(>_<)

いうなれば、いずもを海上のガソリンスタンド、給油艦としてしか使わないということですから非常に勿体ないというか、将来に禍根の残る判断だと思います。

空母の艦載機は、必要な時に載せれば使えるかというとそういうものではないでしょう

机上の空論、テレビゲームではありません

日頃から常時搭載して、厳しい訓練を行っておかなければ、いざという時にものの役に立たないばかりか

海自虎の子のいずもを給油艦的な使い方をする事になってしまうのではないでしょうか

 

いずもの空母化とF-35Bの導入が行われるとした場合の概要

いずもの空母化に関する防衛大臣の発言

11月27日岩屋防衛大臣は記者会見でいずもの空母化とF-35Bの導入について言及しました。

いずも型護衛艦について「せっかくある装備なので、できるだけ多用途に使っていくことが望ましい」と表明

 

またF-35Bについて「短い滑走路で離陸できる性能を持った航空機だ。航空機体系全体をどうするかの一つとして検討している」とも述べています。

いずもの空母化については自民党が5月に防衛大綱に向けた提言を出しており、その中で

「多用途運用母艦」とF35Bの導入が盛り込まれており

今年度に策定される中期防(今後5年間の自衛隊のお買い物計画)にどのように反映されるのか注目が集まっていました。

 

注:防衛計画の大綱

概ね10年後までを念頭に置き、中長期的な視点で日本の安全保障政策や防衛力の規模を定めた指針で、これに基づいて5年ごとの具体的な政策や装備調達量を定めた中期防衛力整備計画(中期防)が策定される。

現在の防衛計画の大綱は平成25年末(25.12.17)に策定されたもので、政府などによると今年末(2018.12)までに見直しを行い、来年度予算に反映させるとしています。

 

この件に付いては昨年末にも話が出ており、その時に検討した記事についてはこちらを参照してください

海自ヘリ搭載型護衛艦、空母に改修か?F-35Bは海空のどちらが保有?

 

F-35Bを導入する場合のいずもの改修はどうなるのか

「いずも」は、平成22年度計画におけるいずも型護衛艦の1番艦として2012(平成24)年1月に起工され、2015年3月に就役したヘリコプター搭載護衛艦

母港は神奈川県の横須賀基地で、満載排水量は2万6000t、全長248m、幅38m

 

飛行甲板の一段下にある格納庫への出し入れに使うエレベーターはすでにF-35Bが使用出来る大きさや仕様になっており

 

改修が必要なのは

甲板の耐熱改修(一説によればすでに、甲板はF-35Bの排気に耐えられる仕様になっているともいわれています)

艦首をスキージャンプ-構造に改修(一説によればスキージャンプに改修する必要は無いという話もあります)

その他、格納庫の一部をF-35Bの整備に都合の良いように改修する可能性もあります。

 

注:スキージャンプ

プロペラの飛行機と異なり、ジェット機は推力が大きいため、上方向に飛び出すことで、離陸の補助となり、垂直離陸するより機体重量を重くすることが出来る(燃料や弾薬をたくさん搭載出来る)

スキージャンプ
スキージャンプ

F-35B対応の改修は「いずも」だけか

「いずも」だけ改修しても、オーバーホールや故障により使えなくなるのでは戦力になりませんから当然、同型艦の「かが」も改修されることになります

また海自の防衛力整備の考え方からすると

常時1隻(1個護衛隊群)が全力発揮出来る体勢を維持するためには4隻(4個護衛隊群)が必要という考え方からすると、空母も4隻必要という理屈になると思います。

(定期整備→訓練中→高練度艦)

注:この考え方は現在はすでに公式には使われていないかもしれません

 

となればひゅうが型2隻も改修して空母化を計る可能性もあります。

今年3月に小野寺防衛大臣は

「護衛艦いずもに、F35Bを搭載するか否かは何ら決まっておりません」とした上で、

ヘリコプター搭載型護衛艦「ひゅうが」型と「いずも」型について「最新の航空機のうちどのようなものが離発着可能なのかなど、現有艦艇の最大限の潜在能力を把握するために必要な基礎調査を実施している」と表明しています。

 

ひゅうが型へのF-35B搭載が困難な場合は「いずも」「かが」の2隻で当面は運用するのか

あるいは、国際情勢や、政治情勢、そして海自の予算や隊員数が増えるのであれば、新たにいずも型あるいは更に大型の空母を建造するという可能性もありますが

こちらは現実的にちょっと厳しいのかもしれません。

海自DDHひゅうが
ひゅうが(海自HPから)

空母搭載に必要なF-35Bの数

すくなくとも「いずも」「かが」の2隻が改修されるとして

各艦に搭載されるF-35Bの数は、格納庫の大きさからして8~10機といわれています。

 

とすれば必要な機数は予備機を入れて各艦10~12機

2艦で20~24機

また、この他にオーバーホール分も含めて考えれば24~30機程度は保有する必要があります。

 

更に4艦態勢になれば48~60機程度必要ということになります。
(部隊としては1個航空隊2個飛行隊程度)

 

対潜ヘリはどうするのか

ある所で、戦闘機を搭載すればヘリが搭載出来なくなるけど、対潜戦はどうするのかというコメントをしている人がいましたが

これは昔ながらのヘリ搭載が可能な護衛艦に分散搭載という事になるのかもしれません

整備については空母で行い、稼働状態のヘリは各艦に分散搭載というような運用になるのかもしれません

護衛艦うみぎりのヘリ甲板

F-35Bを導入するとすれば海空どちらが保有するのか

F-35Bを導入するなら海空どちらが保有するのでしょうか

私らみたいな素人筋は戦闘機は空自じゃないのみたいな意見が多いようですが

玄人筋?からは、空母保有は海自の悲願、海自筋は自前で養成可能と言ってるなどの声が聞こえてきます。

海空どちらがF-35Bを保有するのか、今後、政治的に、軍事的に様々な検討がなされるのでしょうが

魚屋の政治談義として無責任にこの場で検討してみたいと思います。

 

海空自の部隊に与える負担

前にも述べたとおりF-35Bの必要数は24~60機程度になります。

となれば1~2個飛行隊程度は専属にする必要があります。

 

となると、

予算や定員が増えれば良いのでしょうが、そんなことはあり得ない?ですから

海自であれば1個航空隊(固定翼部隊?)を潰して、艦載戦闘機の航空隊(1~2)を作る必要がありますし

空自であれば1個航空隊を艦載機部隊に変更するか、新たに艦載機部隊を編成し、ただしその場合でも各地の航空隊のパイロットや戦闘機を少しずつ削る必要が出てきて、全体的な戦力ダウンは避けられません

(空自の2個飛行隊増強を検討中のニュースについては後述)

 

普段は陸上機のパイロットとして勤務して、空母に搭載するときだけ飛んでいけばいいんじゃない

って言う人がいますが

因みに海自のヘリパイロットの年間艦艇搭載日数は100~150日程度と聞いています

つまり1年のうち4~5ヶ月は海の上

陸上に戻ってきても、技量維持の訓練や新米であれば技量向上のための訓練

それにデスクワークも残っていますから休みもままならないようです。

しかも陸上機と艦載機では航空機の形態も運用も全く違ってきますからおいそれと兼務することは無理でしょう。

 

空自の2個飛行隊増強を防衛省が検討

一部報道によると防衛省が航空自衛隊の戦闘機部隊を大幅に増強する検討しているということです。

内容は現在、空自にある12個飛行隊(定数各約20機)に2個飛行隊増やして14個飛行隊にしようというものです。

 

追加した飛行隊2個については現在飛行隊が1個しかない三沢と新田原に1つづつ増強し各2個飛行隊(千歳、百里、小松、築城、那覇は現在2個飛行隊)にするというもの

F-35Bが配備されるとすれば地理的に新田原になると思われます。

 

事の真偽は不明で、あくまで検討中の話でして、その場合の予算や隊員の数などをどうするかという問題もありますが

部隊全般に対するインパクトが少ないという点に限れば、比較的スムーズに話が進みそうな内容ではあります。

 

海空自の思惑や駆け引き

海空のどちらがF-35Bを保有するのか海自や空自の思惑もからんでくると思います。

まあ、思惑と言うよりは運用構想や作戦構想にも影響が出てきます。

 

海自としては、F-35Bは艦隊防空の重要な要として使いたいでしょうし

空自としてはF-35Bを本土防空のため、さらには空母自体を本土防空のためのプラットホームとして使いたいという思惑があるでしょう

 

かってイージス艦が導入されたときに、空自はイージス艦の防空能力、特にレーダーや管制の能力に驚き、イージス艦を海上の対空ミサイル基地やレーダーサイト的な使い方をしたいという考えがあったようです。

このような海空の思惑の違いが生じると空母の使い方に綱引きが生じることになります。

 

F-35Bが空自の所属という状況で

艦隊防空の要として海自が搭載しているF-35Bを使おうと思えば、空自としては、空自の戦力(F-35Bの戦闘飛行隊1~2個)を海自に引き抜かれるような形になりますし

勝手に空自の戦力を使って欲しくないという思いもあるでしょう

 

うがった見方をすれば、F-35Bの部隊は空自所属であっても空自では自由に使えないということから

優秀なパイロットは配置したくないなどということも考えられなくはないです。

 

あるいは逆に、F-35Bは空自の所属だから、空自の作戦に寄与するようにという圧力がかかれば、海自としてはF-35Bを思うように使えなかったり

さらには空母の運用にまで支障が出てくる可能性があります。

 

F-35B
F-35B

F-35Bはどこの基地に配備されるのか

F-35Bが海自所属になった場合の配備基地

海自の航空基地としてF-35Bが運用できると思われる基地は

八戸、厚木、岩国、鹿屋、那覇が考えられますが

 

八戸は今後の国際情勢を考えると、地理的にやや離れた所にあること

厚木は、地元との協定でジェット機の配備が難しいこと

那覇は、空自がすでに2個飛行隊配備されていることや、民間機との共用空港であること

さらに最前線に近いことを考えるとF-35Bの母基地としては考えにくく

 

残るのは

岩国

すでに米海兵隊のF-35Bが配備されていることから、配備しやすいということは考えられます。

 

鹿屋

鹿屋のすぐ南方にある無人島の馬毛島が米艦載機の訓練場として有力であることや

固定翼機の部隊(第1航空群:P-3Cの部隊)をスクラップアンドビルドする事を考えると比較的に妥当性があること

那覇(第5航空群:P-3Cの部隊)があることから、対潜機の運用については鹿屋の廃止する?対潜機部隊をカバーできること

などから可能性はあると思います。

 

海自主要航空基地配置図

空自所属になった場合のF-35Bの配備基地

これについては地理的な位置関係や、比較的経空脅威が少ない基地で、現時点で1個航空隊しか無いことを考えれば前述の通り、新田原基地が有力だと思います。

F-35Bのパイロットは海空どちらから出すのか

素人考え的には、戦闘機のパイロットは空自?と考えてしまいますが

前述の通り、F-35Bを海空どちらの所属にするのかという問題があります。

 

もちろんF-35Bが空自に配備という事になればパイロットも空自パイロットで決まりになりますが

かりに、F-35Bが海自所属となればパイロットはどうなるのか

 

長期的には海自が自前で養成することになるのでしょうが、最初の航空隊を作るときに空自のパイロットを移籍させてということになるのでしょうか

 

導入期のパイロットは指導的立場の人

海自のF-35Bが導入されるとすれば、海自悲願の艦載戦闘機部隊の立ち上がりという事になります

今後将来にわたって海自戦闘機航空部隊の魁(さきがけ)となって部隊を作り出す人ですから海自の隊員としてもそれなりの人がなるはずです。

おそらく1尉~3佐クラスのエリートパイロットが選抜されることと思います。

 

ここで注意するのは

航空自衛隊から移籍してきたパイロットは、防空戦や、戦闘機の操縦に関しては一流かもしれませんが

海自の行う作戦・・対潜戦は別としても、対水上作戦、艦載機の運用、艦隊の動きなどに関してはにわか仕込みの知識しか無いはずです。

 

海自のパイロットであれば、何年にもわたって海上作戦について勉強し、実際に演習などで実際の所を身をもって体得しているでしょうが

空自パイロットにそのあたりの知識や経験を求めるのは難しいでしょう

 

とは言え、今後、艦載戦闘機部隊の指導的立場として活躍する必要があり

さらには飛行隊長、司令、群司令、そして中枢司令部の幕僚や指揮官として海自の中核を担っていく人物になってもらわないといけない訳ですから

果たして、空自出身者で務まるのか

 

あるいは操縦教官としてだけの飼い殺しになるのであれば、本人にとっても不幸な事になるかもしれません

 

海自P-1
海自P-1

海自が自前でパイロットを養成するとなるとどうなるのか

空自からのパイロットの移籍を良しとせず、最初から海自パイロットを養成するとなるとどのような形になるのでしょうか

 

まずは、最初の基幹要員は1尉~3佐クラスの中堅どころが選ばれることでしょう

この中には、F-35Bの部隊が編成された時点で2佐に昇任し、飛行隊長になる人も含まれているはずです。

 

海自独自に戦闘機パイロットを養成するとするとどうなるか

例えば航空自衛隊の戦闘機養成課程は基礎課程などを除き、飛行訓練課程から説明すると

 

T-7初等練習機(単発プロペラ機)による操縦訓練(22週)

T-4中等練習機(ジェット練習機)による操縦訓練(54週)
または
T-38などによる米空軍基地での操縦訓練(52週)

ウイングマーク取得


T-4による操縦訓練(8週)
または
T-38による米空軍基地での操縦訓練(8週)

F-15、F-2による操縦訓練(35~37週)

戦闘機運用部隊に配属

 

となっています。

 

海自パイロットも初等練習機による訓練は経験していますから、これは省略ないし簡略化するとして

ジェット機からの訓練課程は空自では部隊配属になるまでに95~99週(大雑把に約2年)となっています。

 

もっとも、2年間の訓練で、戦闘機パイロットの新米の列に加わっただけですから、これから更に訓練が必要になるのでしょう。

 

戦闘機パイロットの養成は航空自衛隊に委託する方法の他、米海軍に委託するという可能性もあります。

 

護衛艦いずも
いずも(海自HP)

 

F-35Bへの転換訓練は、米サウスカロライナにある海兵隊のビューフォート航空基地で行われており

英国やイタリアのパイロットもここで教育を受けていて、教育期間は3ヶ月とされています。

 

これらを勘案すると、海自が独自にパイロットを養成するとして、最低限2~3年の期間が必要になります。

 

とは言うものの、F-35Bの導入が決まってもすぐに配備される訳ではなく

予算要求から、発注、そして実際の取得までには4,5年はかかると思われますのでパイロットの養成が間に合わない訳ではないと思います。

 

さらに、配備される基地の設備

滑走路、格納庫や整備機材の整備や整備員の教育、いずもなどの改修も必要になってきますから

そういう点でもF-35Bが海上自衛隊に実際に配備されるのは最短で5年程度、場合によっては7、8年程度かかるかもしれません

まとめ

いずもの空母化はいつのまにか既定路線になりつつあるようです。

その際F-35Bは海自所属になるのか空自所属になるのかまだ見えてきませんが

それぞれ長短あり

 

空自であれば戦闘機の運用はお手の物であり、ノウハウや設備はすでにかなり整っている点で可能性は高いようにも感じますが

艦載機と陸上機では運用が全く異なることや、艦載機では単なる防空戦だけでなく、対水上作戦や洋上における艦隊の運用に対する知識も必要で

 

海自としても空母の保有は悲願であり、海自の思うとおりに使える自前の飛行隊が欲しいことやプライド、将来にわたる人事なども考慮すると

実際の運用面では海自所属の方が何かとスムーズに行くような気もします。

 

いずれにしろ、いずもの空母化が決定されれば、ここ1年以内くらいに、F-35Bがどのような形で(海自か空自か)導入されるのかが見えてくると思います。

 

コメント

  1. 空母なんておこがましい より:

    海自がF35Bを運用することは現実的に非常に難しいと思います。自衛隊と言っても海自、空自は別組織です。万が一にも移籍となれば戦闘機パイロットは、空自を一端退職しなければなりません。また階級も一番下から任用されることになりますし、パイロット個人がそこまで犠牲にして海自に移ることは考えにくいですね。
    空自へ訓練委託にしても空自のパイロット訓練に海上自衛官の適正が合うか不透明であり、現実的にはかなりの困難を伴うでしょう。
    また海自の対潜ヘリ搭載艦の航空燃料タンクは、戦闘機の燃料を積めるだけの余裕があるとも思えません。空自との統合作戦でも現行のヘリ搭載艦を改造しても限られた運用しかできず、マスコミは「空母化」と騒ぎますが空母にはほど遠い現状を理解しているとは思えません。あえて言えばマスコミは「空母化」を単に反戦材料として利用し、政治家はアメリカへのごまかしに利用している節もある。

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