2018年4月12日に行われた海南島沖における中国海軍の空母「遼寧」を含む大規模な海上閲兵式
そして遼寧が台湾南方において、初めて太平洋上において戦闘機の離発着訓練を行ったのにひき続き、東シナ海で実弾演習を実施されました。
遼寧の動きの裏には、南シナ海などでの米空母の動きが関連していると思われます。
今回の遼寧の一連の行動と、周辺における米空母の動きなどについて取りまとめて解説します。
東シナ海で遼寧率いる空母打撃群が実弾演習
中国国営新華社(Xinhua)通信によると、4月22日、空母「遼寧」が率いる空母打撃群が、東シナ海で仮想の敵を相手に実弾演習を含む対空、対潜水艦演習を実施しました。
複数の殲15(J-15)戦闘機が「遼寧」から発進し、空母打撃群に属した艦艇が対空ミサイルを発射したといいます。
今回の実弾演習は、一連の遼寧の動きに引き続く、米空母の動きに関連した可能性が考えられます。
というのは、この時期に、遼寧だけでなく、米空母2隻が南シナ海で行動し、訓練を行っています。
中国としてはこれに対抗して、空母遼寧を南シナ海や台湾周辺で行動させることで、米空母や、米軍の動きを牽制している可能性が高いと考えられます。
今回の遼寧をめぐる一連の動き
遼寧はこの数週間、駆逐艦などを伴った一連の演習を南シナ海(South China Sea)や台湾沖で実施しています。
この前後の米海軍や中国海軍の全般的な動きを押さえてみたいと思います。
3月5日
米原子力空母カール・ビンソンが5日、ベトナム中部ダナンに寄港
3月11~3月23日
ヘリコプター搭載型護衛艦「いせ」が米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」及び米イージス艦2隻と続けていた共同訓練を、23日に終えたと海自が明らかにしました。
訓練は11日に南シナ海北部で訓練を始め、23日に沖縄周辺で終了
同時期に東シナ海では強襲揚陸艦「ワスプ」(長崎・佐世保基地配備)の艦上で、岩国基地(山口県)配備の海兵隊の最新鋭ステルス戦闘機F35Bが発着艦訓練などを実施している。
3月20日
遼寧と同行する数隻の艦船が、台湾海峡(Taiwan Strait)を通過。
3月23日
中国海軍が南シナ海で近く実戦演習を実施することを、軍機関紙・解放軍報系メディアが23日明らかにした。
北京の軍事筋は、中国軍初の空母で訓練用の「遼寧」が南シナ海の実戦演習に初めて参加するとの見通しを示した。
3月26日
プラネット・ラボ社(Planet Labs:米国の民間地球観測衛星製造運用会社)は、中国海軍空母「遼寧」を中心にして40隻以上の艦艇が2列縦隊を編成して南シナ海の海南島沖を航行している状況が映し出されていた衛星写真を公開した。
中国海軍は南シナ海で軍事演習を行う旨を公表していたため、この大艦隊はその演習に参加する中国海軍艦艇と考えられた。
ロイター通信は3月末、衛星写真を基に、遼寧を中心とする40隻以上の艦隊が南シナ海に集結する様子を報じた。
4月5日~
中国海軍は5日以降、南シナ海の海南省の東方沖で過去最大規模の実弾演習を実施し、中国初の空母「遼寧」も参加
海南省の海事当局は4月5~11日の期間中、「軍事訓練」を理由に同省東沖の航行を禁止する公告を出した。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)は、艦隊には中国海軍の北海、東海、南海の各艦隊から艦艇が参加しており、空軍やロケット軍も演習に参加するとの軍事専門家の見方を伝えた。
周辺では潜水艦の航行も確認されており、演習は中国軍が早期運用を目指す空母打撃群による実戦を想定したものと見られる。
中国海事局は11日から13日まで、海南島・三亜市沖の南シナ海を「軍事訓練」のための臨時航行禁止区域に指定。(中国初の空母「遼寧」が参加する大規模な演習が行われた)
4月10日
セオドア・ルーズベルトを中心とする米空母打撃群は10日、中国などが領有権を主張する南シナ海で演習を行った。
米軍は定期的な演習だと主張、演習後、防衛協定を結ぶ同盟国フィリピンへと向かった。
米空母セオドア・ルーズベルトから、F18戦闘機20機が20分間、離着陸訓練を行い、米軍の正確さと効率性を誇示
4月12日
中国海軍は南シナ海で大規模な海上閲兵式(軍事演習)を実施
参加艦艇48隻、軍用機76機、参加人員1万人超、潜水艦少なくとも4隻以上参加
習近平主席は迷彩服を着て2015年に就役した最新駆逐艦「長沙」に乗艦し、「中華民族の偉大な復興を実現するうえで、強大な海軍を建設するという任務が今ほど差し迫ったことはない。世界一流の海軍の建設のために努力せよ」と中国の海軍力を世界にアピール
2018年4月12日、共産党機関紙の人民日報(電子版)は同日、人民解放軍が台湾海峡で実弾演習を18日に実施すると発表
4月21日 11時頃 台湾南方(与那国島の南、およそ350キロメートル)東進しながら遼寧から複数の戦闘機が離発着訓練
遼寧以下7隻の艦隊が対抗演習を実施
その後艦隊は4月21日に宮古島の東、およそ120キロメートルの海域を太平洋から東シナ海に向けて北西進し、沖縄本島と宮古島の間の海域を通過し、東シナ海に向けて北西進した。
米中両国の空母機動部隊の動きまとめ
米空母カール・ビンソンの動き
米空母カール・ビンソンは3月5日に中国と南沙諸島の領有権を争っているベトナムのダナンに入港
その後、海自のヘリ空母「いせ」と協同訓練をしつつ東進
中国の空母遼寧が台湾海峡を通過しているまさにその時に、台湾の反対側(バシー海峡)を「いせ」と共に沖縄南東に向け東進していたことになります。
米空母ルーズベルトの動き
中国海軍が遼寧を含む48隻の大艦隊で海南島東方海域で演習を実施しているまさにその時に、南シナ海に侵入し4月10日(海上閲兵式の2日前)に演習を行っています。
演習終了後米空母ルーズベルトはこれも中国と南沙諸島の領有権を争っているフィリピンに向かいました。
中国空母遼寧の動き
中国空母遼寧は当初は、中国沿岸に沿って南下し、自国沿岸から離れることはありませんでした。
その後太平洋に出て演習を行います。
元々の計画であったのかもしれませんが、今回の米空母の動きに呼応して、対抗措置として台湾南東海面で演習を行った可能性も考えられます。
まとめ
太平洋戦争後、米海軍の空母機動部隊に対抗するような、空母部隊は長らく存在しませんでした。
ソ連も一時期、空母を建造し始めましたが、経済的な問題や、ソビエト連邦の崩壊に伴い、本格的な空母部隊の建造は諦めています。
その後、中国はロシアから輸入したヴァリヤーグを空母遼寧として完成させ、また、新たな国産空母を複数建造しており、最初の中国国産空母の試験航海も迫っています。
ここに来て、南沙諸島をめぐり、米中の空母部隊が、かなり露骨な牽制を行いました。
この動きが今後どのような方向に向かうのか注目すべき所であります。
また、米韓合同軍事演習に米空母は参加しませんでしたが、所がどっこい、横須賀のロナルド・レーガンを加えるとアジア地域に3隻もの米空母が行動しており
北朝鮮情勢との絡みも考えると、今後の米朝首脳会談の結果次第では、米空母部隊が、そのまま北朝鮮への圧力に使われる可能性もあるのでしょうか、今後の米空母の動きが注目されます。
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