記事内に広告を含む場合があります。

極超音速兵器に弾道ミサイル防衛(MD)は有効なのか、対応策は

BMDイメージ BMD
防衛白書から抜粋

 

最近は極超音速兵器が出現し、弾道ミサイル防御(MD)では対応が困難になっていると言われています。

となると、現在ある弾道ミサイル防御は役に立たないのか、あるいは対応は難しくなっているとはいう物のある程度の対応は出来るのでしょうか。

また、現在の弾道ミサイル防御に代わる新しい防御方法や装備はどうなっているのでしょう。

防衛省の統合防空ミサイル防衛の計画から概要を調べてみました。

 

弾道ミサイルと極超音速癖の飛翔経路の違い

弾道ミサイルの飛翔経路

放物線状に弾道を描いて飛翔し、主に、空気の無い宇宙空間を飛翔するために遠距離にある目標を攻撃することが可能です。

弾道ミサイルは飛翔距離により

SRBM(短距離弾道ミサイル:short-range ballistic missile)→1,000km未満

MRBM(準中距離弾道ミサイル:medium-range ballistic missil)→1,000~3,000km

IRBM(中距離弾道ミサイ: intermediate-range ballistic missile)→3,000~5,500km

ICBM(大陸間弾道ミサイルintercontinental ballistic missile)→5,500km~

飛翔距離による弾道ミサイルの分類

また飛行高度により

ミニマムエナジー軌道:遠くへ飛ばすためには最も効率的な飛翔軌道

ロフテッド軌道:必要以上に高度を高く取ることで、急角度で落下し対処が困難

ディプレスト軌道:ミニマムエナジー軌道に比べ低硬度で飛翔することで、遠距離で探知することが
困難なために、対処に使える時間が短くなる(対処が難しくなる)

弾道ミサイルの軌道による分類

 

極超音速兵器の飛翔経路

極超音速兵器は弾道ミサイルで打ち上げた後、宇宙空間で分離し、大気圏に突入後は極超音速(マッハ5以上)で滑空する極超音速滑空兵器:HGV:Hypersonic Glide Vehicle)と特殊なエンジンを搭載して極超音速で飛行する極超音速巡航ミサイル(HCM:Hypersonic Cruise Missile)があります。

HGV:中国の東風(DF)17、ロシアのアバンガルドなど

HCM:ロシアのツィルコンなど

極超音速兵器(Hypersonic weapon)

極超音速兵器は弾道ミサイルのように一定の弾道を描いて飛翔するのでは無く、高度やコースを途中で変更することが可能なことや、弾道ミサイルより低高度を飛翔することから、接近するまで地上からは探知が難しくなっています。


我が国のミサイル防衛(MD)の体勢

イージス艦

ミサイル防衛と言えばでてくるのがイージス艦

現在海上自衛隊では8隻のイージス艦を運用していて、ミサイル防衛に対応しています。

イージス艦としては

・こんごう型4隻
こんごう、きりしま、みょうこう、ちょうかい

あたご型2隻
あたご、あしがら

まや型2隻
まや、はぐろ

イージス艦の各タイプ

防衛省HPから抜粋

PAC-3(ペトリオットミサイル)

航空自衛隊の地対空ミサイルのPAC-3(ペトリオットミサイル)もミサイル防衛(MD)に組み込まれています。

28個高射隊体勢で、順次PAC-3MSE(Missile Segment Enhancement:ミサイル部分強化型)に更新されています。

PAC-3の配備状況

防衛省HPから抜粋

警戒管制レーダー

全国各地にある警戒管制レーダーもBMD対応型が多くなってきています。

FPS-3改(7カ所)
FPS-5(4カ所)通称ガメラレーダー
FPS-7(6カ所)

自衛隊レーダーサイトの配置

防衛省HPから抜粋

統合防空ミサイル防衛能力強化

従来の弾道ミサイル防御

防衛省HPから抜粋

従来のBMD

 

これまで構築してきたミサイル防衛だけでは極超音速兵器やミサイル技術の進歩、我が国のミサイル防衛体制では対処しきれない多数のミサイルなどによる飽和攻撃の可能性に対応しきれなくなっているのが現実で

統合防空ミサイル防衛能力の強化が必要になってきています。

防衛省の防衛力整備計画では

2027年までに、HGV等、小型無人機に対処する能力を強化

およそ2034年頃(おおむね10年後)までにHGV等に対する広域防空能力の強化や、より効率的・効果的な無人機対処能力の強化を計画しています。

統合防空ミサイル防衛の概念図

防衛省HPから抜粋

統合防空ミサイル防衛の概念図

 

具体的には

・イージス艦の能力向上

現在より高い迎撃能力(ロフテッド軌道への対処能力や、同時対処能力)を備えるほかGPI(Glide Phase Interceptor滑空段階迎撃用誘導弾)の他、さらに発展させた装備を運用できる拡張性を考慮したシステムにする。

・GPI日米共同開発

滑空段階における極超音速架空兵器兵器等対処のために日米共同でイージス艦発射型誘導弾(GPI)を開発

・03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型の開発

HGVや弾道ミサイル対処に対応

・ペトリオットの能力向上

弾道ミサイルと巡航ミサイルの両方に対応でき、かつ射程が拡大したPAC-3MSEを運用する能力を向上させる。

・SM-6迎撃ミサイルの導入

SM-6は航空機に対する長距離対空ミサイルとしての役割だけで無く弾道ミサイルやHGVをターミナル段階で対処する機能を有しています。

・警戒管制能力の強化

FPSレーダー(警戒管制レーダー)の改修によりHGV等の目標を早期に探知し安定的に追尾するための機能を強化

またE-2D(早期警戒機:通称アドバンスドホークアイ)やTPS-102A(移動式レーダーサイト)などの取得による警戒監視体勢の強化

・自動警戒管制システム(JADGE)への適合

改修したレーダーをJADGEへ適合化させネットワーク上でHGV等の情報を共有できる能力を強化

・JADGEにAIを導入

JADGEにAIを導入し、状況判断の迅速性、確実性を向上させ、効率的に迎撃兵器を割り当てる。

・ミサイルの調達(数)

必要なミサイルを調達し、継戦能力を向上させる。

・反撃能力の獲得

日本の周辺国では極超音速兵器やミサイル関連技術、多数のミサイルなどによる同時飽和攻撃などのミサイル運用能力が飛躍的に向上し、質量とも著しく増強されていて、ミサイルによる攻撃が現実的な脅威になってきています。

このような状況の中で、日本も打ち込まれたミサイルを迎撃しているだけでは、完全に対処することは困難になってきています。

このため、防衛省では相手からのミサイル攻撃に対して、飛来するミサイルを迎撃するだけでは無く、反撃する能力を保有することで、敵のミサイル攻撃自体を抑止するとともに、発射基地を無力化することで敵のミサイル攻撃能力を減殺することも目指していると言えます。

統合防空ミサイル防衛における反撃

防衛省HPから抜粋

まとめ

防衛省のミサイル防衛(MD)によってどの程度極超音速兵器を迎撃できるのかは、防衛上の秘密でしょうし、いざ実戦になった時にどの程度有効なのかも、それこそ神のみぞ知ると言ったところでしょうが

現状の計画から見えてくるのは、

・迎撃ミサイルの性能向上

・イージス艦のシステム能力向上
(同時対処できるミサイルの数や極緒音速兵器への対応など)

・各システムを連接し、リアルタイムで目標情報を共有、AIを活用して、効率的に迎撃兵器を敵のミサイル攻撃に配分

・敵ミサイルの高度化や数に対応するためには、敵地攻撃能力を保有することで敵の攻撃意図を封じ込める、あるいは攻撃してくるミサイルを敵地において破壊することで、自衛隊の迎撃能力を飽和させない様にする。

などの方策がとられることになります。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました