韓国への輸出規制(フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素)が話題になっています。
多くの報道は、徴用工問題への報復や、日韓の様々な政治的な問題に結びつけて分析していて、中には結びつけるどころか報復や、禁輸措置などと断定している内容のものまであります。
しかし、これらを軍事的観点から見てみると、また違った視界が開けてきます。
あるいはもしかしたら、経済や政治的な問題では無く、本質的にはもっと違った問題がでてくるのかもしれません
今回の措置はそもそも韓国への対抗措置でも輸出規制でもない
「以前から問題になっている徴用工問題に対し、韓国側が関係改善に向けた動きを見せないことから、対抗措置として、経済制裁をすることに決めた」
等のような報道がなされています。
実際はそうなのかもしれませんが、政府は一言もそのようなことは言っていません。
あくまで政府(経産省)の発表では
「日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況」
「大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっている」
「大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生した」
このためフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの3品目の輸出時の優遇措置の対象から外し
「輸出管理を適切に実施する観点から、厳格な制度の運用を行うこととした」
と発表しています。
また、これに加えて
「ホワイト国から大韓民国を削除するための政令改正について意見募集手続きを開始する」
となっています。
ある意味、徴用工問題への更なる脅しとも取れますが、見方によっては、それとは関係なく更なる戦略物資の輸出管理の厳格化が追加になる可能性もあります。
韓国への輸出管理が厳正化された3品目の軍事的な意味合い
韓国への輸出管理が厳格化された3品目は半導体などを製造するのに必要不可欠な部材ということで騒がれていますが
軍事的にはどのような位置づけの製品なのでしょうか
フッ化水素(エッチングガス)
フッ化水素とウラン濃縮
フッ化水素は、核爆弾の材料となるウランの濃縮のために使われます。
天然のウランは99%以上が核分裂を起こさないウラン238という物質で、核分裂を起こすウラン235は0.7%しか含まれておらず、このままでは、核燃料や核爆弾として使うためには濃度が低すぎ、使えません。
核燃料として使うためにはウラン235の濃度を3~5%
核爆弾として使うためには90%以上に濃縮する必要があり
この濃縮過程において遠心分離機が使われます。
といっても固体のままでは分離させるのは困難ですからフッ化水素とウランを化合させて気体にして遠心分離機にかけます。
つまり、フッ化水素はウラン濃縮=原子爆弾の製造に必要な物質で
例えば現在北朝鮮は、米国と非核化の交渉を行っていますが、その一方で、核爆弾の製造(ウラン濃縮)を全力で行っていることが推測されています。
また、米国との関係が悪化し、一触即発とも言われているイランも、ウランの濃縮を進めていると自ら発表しています。
これまで韓国から北朝鮮やさらにイランへフッ化水素が横流しされているとの噂もあり、これに対して日本政府からの問い合わせに韓国が全く応じていないとの報道もあります。
フッ化水素とサリン
メチルホスホニックジクロライドとフッ化水素(HF)を反応させることにより精製される物質が、サリンの原料になります。
フッ化ポリイミド
フッ化ポリイミドは電子機器の絶縁材料としてレーダーなどに使われる可能性があります。
また、熱安定性も良い耐熱材料で、ベースポリマーとして航空機エンジンの軸受け、エンジン周辺部材にも使用されており
航空分野、エレクトロニクス分野、光学材料分野など多用途へ展開されています。
レジスト
レジストは軍用航空機などに使われる精密機器の半導体の感光剤として用いられます。
韓国をホワイト国から外すのは単なる報復措置なのか
様々な報道を見ていると、今回の輸出管理の厳格化は、徴用工問題などへの報復的な見方が大半ですし、長引けば韓国が調達先を変更したり、自国での開発が進むような意見もあります。
しかし、これを軍事的な観点から見れば、韓国はテロ支援国家に対して戦略物質を横流ししている疑いがぬぐえず、今までどおり輸出を続ければ、テロ支援国家を支援する国を支援していることになり
事が公になれば、日本の責任も免れませんし、そもそも北朝鮮の核は日本にとっても重大な脅威でもあります。
問題は貿易上の損得や、日本との交渉に応じようとしない韓国への報復といった次元での話では無く日本ばかりか、世界の安全保障にとっても重大な問題となり得る内容です。
そのような事態を放置していれば、国際社会から日本が非難を受けかねませんし、場合によってはEUや(EUは元々韓国をホワイト国に指定していません)米国から戦略物資に関する新たな制裁措置がとられる可能性もあるかもしれません
うがった見方をすれば、現在緊張状態が続いているイラン状勢に関連して、ウラン濃縮に必要なフッ化水素の流失を止めようと、米国からの要請ないしはアドバイスがあって、敢えてこの時期に輸出管理の厳格化に乗り出した可能性も否定できません
まとめ
現時点では、日本政府の行った輸出管理の厳格化の目的が
韓国への報復にあるのか
あるいは額面どおり、韓国の怪しげな戦略物資に関する動きに対する疑念から、行ったことなのかは明確には分かりません
とはいうものの、韓国の半導体の製造に大きな障害が出れば、米国にも大きな影響が出ることは間違いがありません
日本政府としては当然米国と綿密な調整を行っているはずで、米国もそれには異を唱えなかったと言うことなのでしょうし、あるいはそもそも、イランとの関係が緊迫化している米国からのプッシュがあって、この時期にいきなり輸出管理の厳格化を打ちだした可能性もあります。
今後日本政府の新たな管理の厳格化が追加されるのか、そして、それに対抗して韓国の対抗措置が発動されるのか
そうなれば日韓の貿易戦争とも言える事態に発展するわけですが、なかなか目を離せない事態になりつつあります。
怪しげな事を韓国がやっている、それに対して日本が関係することで、韓国が異常に反発するという構図は、海自哨戒機P-1に対するレーダー照射事件と似ている様な気がするのは私だけでしょうか
韓国艦艇レーダー照射は、北朝鮮工作船拿捕現場を見られたから?
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