北朝鮮の弾道ミサイル発射実験が、世界各国の非難をよそに度々行われています。
所がこの弾道ミサイル実験の発射時刻はほとんどが早朝に集中しています。
なぜ早朝にミサイル実験を行うのでしょうか、その理由を解説します。
北朝鮮の弾道ミサイル
現在北朝鮮が開発中の弾道ミサイルは2系統あります。
北極星系:固体燃料
火星系:液体燃料
固体燃料は、弾道ミサイルに燃料を積みっぱなしになりますから、いつでも発射が可能ですが
液体燃料の場合は、ミサイルの腐食などを押さえるために、発車の直前に燃料を搭載する必要があり、有事であれば発車前に燃料注入が始まるので発射の兆候は捉えやすくなります。
TEL:transporter erector launcher(輸送起立発射機)
なぜ北朝鮮の弾道ミサイル発射は早朝に行われるのか
発射準備の状況を把握されにくい
特に液体燃料のミサイルの場合、燃料搭載に時間がかかりますし、発射場所に移動して、ミサイルを発射状態に設置するまでの状況が昼間ですと、人工衛星から丸分かりになりますから
出来るだけ夜間のうちに発射準備を整え、明るくなったところで発射するのが望ましいと考えていると思います。
早朝は大気の状態が安定している
早朝は大気の状況が安定しています。実戦であれば大気の状態うんぬんは関係ありませんが、これまで行ってきているのはあくまで発射実験です。
大気が安定していなければ、風によって発射自体が失敗する可能性もありますし、発射した後のデーターについても、風の成分が含まれると、解析が複雑になってしまいます。
例えば風速20mの風が同じ方向に吹いていたとすれば3分間にミサイルは3.6kmも風下に流されてしまいます。
あるいは風の流れが複雑であれば、ミサイルの制御も難しくなりますし、飛行データの解析も更に複雑になってしまいます。
なぜ早朝は大気の状態が安定しているのか
では、なぜ早朝は大気の状態が安定しているのでしょうか。
それは、日中は太陽が出ていて大気や地上(海上)が熱で温められていて、例えば地上は太陽の熱でどんどん温度が上がり、空気を暖めて上昇気流が起こります。
一方海上は、海水は比熱が大きいためになかなか温まらず、気温も低いままです。
そうなると冷たい空気(高気圧)は暖かい空気(低気圧)のある方へ流れようとしますから、海から陸に向けて風がながれます。
一方、日没後は、陸地は急激に温度が下がる一方、海上は、海水はなかなか冷たくならないので相対的に温かくなって、夜間は陸から海に向かって風がながれます。
このため、明け方近くが1番陸と海との温度差が少なくなり、風の流れが安定してくることから、大気の状態が安定する訳です。
弾道ミサイルの発射の兆候がなぜ分かるのか
夜間であっても、赤外線を使った人工衛星からの映像で、ある程度のミサイル発射基地の動きは分かりますが
ミサイルの発射実験の兆候として1番分かりやすいのはテレメタ-信号が送信され始めることです。
テレメトリー信号とは、ミサイルから発信される電気信号で、その時のミサイルの状態や位置、移動方向などのデーターが送られてきます。
北朝鮮はそもそもミサイルの飛行状況を観測するためのレーダー網などを保有していませんし
それ以外にも、ミサイルがどのような状態で飛行しているのか
・燃料の噴射状態
・姿勢制御のための装置が正常に(どのように)作動しているのか
・ミサイルの位置や飛行姿勢、速力
その他様々なデーターを発射基地とやり取りする必要があります。
これは発射した後だけでは無く、データーが正常に送られているかどうかを、発射する前にチェックしておく必要がありますから、通常、テレメタ-信号は発射の数時間前から発信されるようです。
つまり、発射基地の動きが慌ただしくなってくる
→テレメトリー信号が発射され始める
=ミサイルの発射実験はほぼ確実&間もなく発射される。
ということになります。
もちろんこれは実験段階の話で、実験データーを集めるためのものですから、実戦になればテレメトリー信号が発信されることはありません。
というか、テレメトリー信号を発射する装置が搭載されている部分には炸薬などが入った弾頭が載せられているはずです。
まとめ
北朝鮮のミサイル発射実験が早朝に行われるのは、偵察衛星に動きをつかまり憎くするためと、早朝は大気が安定していて、実験がやりやすいという2つの理由があります。
また発射前には、発射基地周辺の動きが慌ただしくなるほかテレメトリー信号が発射され始めるので、間もなく発射するということが分かります。
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