2019年末に入って、再び北朝鮮の様子が怪しくなってきました。
北朝鮮は年末までに、米国が方針転換しなければ、交渉を打ち切るなどと主張しています。
また米国のトランプ大統領も、金正恩をロケットマンと再び呼び出したり、軍事力の行使をちらつかせています。
これまでの推移を見れば、年末までに米国が何らかの譲歩を打ち出すとも思えませんし、年末か年始あたりに北朝鮮が何らかの挑発行動を取る可能性が高まっています。
また、北朝鮮は12月8日、東倉里(トンンチャンリ)の西海衛星発射場で「非常に重要な」実験に成功したと発表しています。
大方の見方としては、長距離弾道ミサイルのエンジンの燃焼試験に成功したとみられています。
となれば、次ぎに北朝鮮が行うのは長距離の弾道ミサイルの発射実験かもしれませんし、あるいは米国を極限まで刺激しないように中距離の弾道ミサイルの発射実験を行うかもしれません。
そうなれば、これまでと異なり、米国も強い姿勢で対応する可能性があり、事態がエスカレートして、米国が北朝鮮に対して、何らかの軍事行動を取る可能性も出てきます。
そして、米国が北朝鮮に対して軍事行動を行えば、北朝鮮は報復として、日本に対して弾道ミサイルによる攻撃を行う事も予想され、その攻撃の中には核弾頭による攻撃が含まれる可能性も否定出来ません
そのような状況になったときに、どのくらいのミサイルが日本に飛来することになるのでしょう。
また、北朝鮮のミサイル攻撃に対して、日米はどのような対応を取れるのでしょう。
北朝鮮の日本を攻撃する能力
北朝鮮が日本を攻撃するとすれば弾道ミサイルによる攻撃
まずは、北朝鮮が日本を攻撃する能力を考えてみます。
北朝鮮は旧式の戦闘機などしか保有していませんし北朝鮮の保有する海軍艦艇は旧式の駆逐艦などわずかです。潜水艦もほとんどが博物館でなければ見られないような旧式艦、あるいは韓国に工作員を浸透させるための小型潜水艇しか保有していませんので
漁船などに紛れてゲリラなどを送り込むような事を除いて、主に考えられるのは、弾道ミサイルによる攻撃です。
北朝鮮が保有する日本攻撃用の弾道ミサイル
北朝鮮が保有する弾道ミサイルのうちムスダンなどの中長距離ミサイルは、距離的に日本を狙うものではありませんし、実験段階のものですから、日本を攻撃するとすれば、既に実戦配備されている
ノドン:射程1500~2000km(約300発保有)
スカッドER:スカッドミサイルの射程延伸型:射程約1000km(約100発保有)
合計約400発程度
これらのミサイルはTEL(輸送起立発射機:transporter erector launcher)が無ければ発射出来ませんが、北朝鮮の保有するTELは50台程度以下とみられています。
経済制裁による部品不足なども予想され、実際には稼働台数はもっと少ないかもしれません。
核弾頭については諸説有りますが20~30発程度保有していてもおかしくはありません。
北朝鮮の弾道ミサイル攻撃に対する迎撃態勢
北朝鮮の弾道ミサイルの大部分は地上で撃破される
北朝鮮が日本に対して弾道ミサイル攻撃を仕掛けてきた場合の日米の迎撃体勢はどうなるのでしょう。
まずは人工衛星による北朝鮮の監視は平時でも行われていますが、有事ともなれば、米軍の偵察機や戦闘攻撃機が常時北朝鮮上空で待機して、
地下トンネルに隠して有るであろう弾道ミサイルを搭載したTELが地上に出てきて、発射態勢を取ろうとすれば、すぐに発見されて、戦闘攻撃機が爆撃に向かうことになるでしょう。
北朝鮮軍の防空網は米軍に比べて圧倒的に貧弱ですから、イラク戦争の時のように開戦初期に米軍によって壊滅させられ、制空権は完全に米軍が握っているものと予測します。
また、開戦劈頭には、事前に判明している北朝鮮の弾道ミサイルの基地の多くは空爆によって破壊されているはずです。
ですから、北朝鮮の弾道ミサイルは大部分が地上で、発射される前に撃破されることになります。
また生き残った弾道ミサイルが、空爆の隙を突いて発射された場合にも日米のイージス艦で迎撃することになります。
日米のイージス艦の数や対処能力
米海軍についてはBMD対処可能なイージス艦22隻のうち10~15隻程度は日本海に展開されていることでしょう。
海自のBMD対処可能なイージス艦は現時点で5隻
合計15~20隻のBMD対処可能なイージス艦が日本海などに並び迎撃を行います。
海自イージス艦の場合、SM-3を各艦8発搭載し、1発の弾道ミサイルに対して2発の迎撃ミサイルを発射しますから各艦4発まで迎撃可能
米軍も同様とすれば、合計60~80発の弾道ミサイルに対応可能になります。
注:SM-3の命中率は約90%なので2発発射した場合の命中確率は
1-(0.1×0.1)=99%の命中率となります。
PAC-3は拠点の防衛しか出来ない
日本本土の防衛にはそのほかに空自の持つパトリオットミサイル(PAC-3)もありますが、射程が20kmしかありませんし、PAC-3の部隊も6個高射群24個高射隊しかありませんから
弾道ミサイル防御に関しては、重要拠点を防御することは出来ても、国土全体を防御することは困難です。
北朝鮮が同時攻撃を仕掛けてきたら飽和しないか
北朝鮮が、同時にミサイルを発射した場合、飽和攻撃になって、イージス艦では対処不可能ではないかという考える人もいるでしょう。
しかし前述のように発射機TELが最大50台程度、おそらく実働30台程度以下であり、その多くは開戦劈頭、または発射のために地下トンネルから出た時に、空爆によって破壊されるものも多く出ると考えられます。
といっても最悪の事態を想定し、30発同時に発射されたらどうなるのでしょう。
イージス艦の数は15~20
同時に2発程度は迎撃可能と言われていますが仮に同時対応が1隻につき1発の弾道ミサイルとした場合ではどうなるのでしょうか
北朝鮮の弾道ミサイルは1箇所に集められているわけでは無く、おそらく全土に少数ずつ分散して配置されているものと考えられます。
例えば半島西海岸と東海岸付近にある弾道ミサイル発射位置が500km離れていた場合、マッハ10で飛行したとしても、日本海上空を通過するときには2分30秒の時間差があります。
また、空襲を避けつつ、地下トンネルからTELが地上に出て、弾道ミサイルを発射させるのに、北朝鮮全土にある全部隊が連動して、ピッタリ同時刻に発射させることはまず不可能でしょう。
そのほかにも弾道ミサイルを発射する場所と狙っているターゲットとの位置関係(方向)や、イージス艦がどの位置で迎撃するかによっても時間差が生まれます。
となれば、最悪の事態(30発同時発射)の場合でも15隻のイージス艦で、ほぼ全弾迎撃可能であると考えられます。
もちろん、たまたま運悪くタイミングが重なったり、迎撃ミスなどによって撃ち漏らす可能性はあります。
北朝鮮は弾道ミサイルで日本のどこを狙ってくるのか
北朝鮮は弾道ミサイルで自衛隊や米軍基地を狙うのか
北朝鮮が、日本に向けて弾道ミサイルを発射する場合、自衛隊や米軍の基地を狙うのでしょうか。
これについては可能性はあるものの、目標としては限定的であると思います。
というのは弾道ミサイルという特性から、命中精度はあまり高くなく、軍事基地を狙ったとしても、基地の中の目標とする対象物に着弾する可能性が低いからです。
ノドンに搭載する弾頭であればせいぜい1t爆弾
危害半径は150m、爆風でせいぜい半径500m程度のものに軽微な被害を与える程度です。
核弾頭であれば、人口密集地を狙った方が効率が良いですし、自衛隊基地などは大概、街外れの僻地などに存在しますから効率は悪くなります。
しかも大規模な基地であればPAC-3が配備されていて、迎撃されてしまう可能性も高くなります。
もちろん、米軍基地などをあえて狙って発射し、
「米軍基地があるから狙われる!」などの世論工作を考えて撃ち込む可能性はあります。
狙うなら大都市の人口密集地
軍事的合理性を目指すなら、弾道ミサイルは通常弾頭にしろ核弾頭にしろ、大都市の人口密集地を狙うのが効率的です。
仮に朝のラッシュ時の新宿駅に直撃すれば、通常弾頭であっても数百人から数千人が死傷することになります。
何の関係も無い一般民間人が多数死傷し、弾道ミサイルがいつどこに飛んでくるかわからないとなれば、多くの日本人は恐怖におののき、今すぐ軍事作戦を中止しろなどと言い出す人もいるでしょうから、北朝鮮からすれば狙い目だと考えられます。
単なる脅しなら、沿岸近くか山の中
米軍による軍事作戦がまだ発動されていないものの、間もなく攻撃が開始されるかもしれないというような状況で、日本国民を脅すことで、軍事作戦を躊躇させることが出来るかもしれないという希望の元に、
北朝鮮が、脅しの意味で弾道ミサイルを日本の沿岸近くや、山の中に弾道ミサイルを撃ち込む可能性も考えられるでしょう。
まともに人口密集地を攻撃してしまえば、即座に北朝鮮への軍事行動が発動されてしまいますから、さすがにそういう事は避け、直接的な被害が出ないような場所に弾道ミサイルと撃ち込むわけです。
北朝鮮は日本を核で攻撃するのか
北朝鮮が核で日本を攻撃してしまえば、即座に全面戦争になりますし、米軍が報復として、平壌などに核攻撃を行ったり、核を使わなかったとしても徹底的な軍事作戦が行われるでしょうから、北朝鮮としても、安易に核兵器を使うことは無いと思います。
といっても、米軍の軍事攻撃で、金正恩の支配体制や軍事態勢が崩壊し、もはやこれまでと考えた時に、最後の報復として核を使用する可能性はあります。
前述のように、イージス艦などにより、北朝鮮の発射する弾道ミサイルのほとんどは迎撃されるはずですが
迎撃時のミスや、悪環境が重なってしまった、あるいは想定外のことが発生するなどして、数発程度の弾道ミサイルが日本本土に着弾する可能性は0ではありません。
そしてその数発のうちに核弾頭が含まれている可能性も否定は出来ないでしょう。
まとめ
米朝の関係が悪化し、北朝鮮が限度を超えて挑発してきた場合に、米軍は北朝鮮に対して何らかの軍事行動を取る可能性があります。
それに対して北朝鮮が、日本本土に対して弾道ミサイルを撃ち込んでくる状況が考えられます。
これに対して、米軍による、北朝鮮の発射基地の爆撃や、発射態勢に入ったTELに対する空爆で、北朝鮮の弾道ミサイルの大部分は、発射前に地上で撃破され
わずかに隙を突いて発射された弾道ミサイルもほとんどがイージス艦などによって迎撃されます。
とはいうものの、100%迎撃できるかどうかは神のみぞ知る
数発程度は撃ち漏らして、日本に着弾する可能性はあり、その中に核弾頭が含まれないことを祈るのみです。
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