海自、新3000tクラス潜水艦「たいげい」が進水、その設計思想や性能は

海自潜水艦

海上自衛隊の最新鋭潜水艦の命名・進水式が10月14日、三菱重工業神戸造船所で行われました。

 

「たいげい」は新3000tクラス潜水艦の1番艦、ネームシップ艦となります。

この「たいげい」の設計思想や性能はどのようなものなのでしょう、前級のそうりゅう級とどのような性能の違いがあるのでしょうか。

 

たいげい進水式
海幕HPから引用

「たいげい」のスペック全般

全長84メートルと全幅9.1メートルは、そうりゅう型と同じ、深さは10.4メートルとなり、そうりゅう型より0.1メートル大きい。基準排水量も3000トンとなり、そうりゅう後期型より50トン多い。軸出力は6000馬力。建造費は約800億円。乗員は約70人。

 

静粛性が向上した船体構造を採用し、「そうりゅう」型潜水艦より、探知性能や被探知防止性能が向上した潜水艦です。

潜水艦への女性自衛官配置制限の解除を受けて、居住区内に仕切り等を設け女性用寝室を確保することやシャワー室の通路にカーテンを設けるなど女性自衛官の勤務に対応


「たいげい」の設計とそうりゅうクラスとの違い

船 体

船体全般、スターリングエンジンの撤廃

そうりゅうクラスに比べて基準排水量が100t(5番艦以降に比べて50t)重くなり、最初からリチュウムイオン電池を搭載することを前提に設計されています。

 

そうりゅう型は元々はAIPとしてスターリングエンジンを搭載していましたが、大出力が出ないことや、ディーゼルエンジンとは異なる燃料を使用すること、スターリングエンジンが艦内の容量を圧迫することなどから

後期型からはスターリングエンジンを廃止してリチュウムイオン電池を搭載していましたが、もともとスターリングエンジンを搭載する前提で設計されていた船体から、スターリングエンジンを撤去し、代わりに数を増やしてリチュウムイオン電池を搭載したものですから、必ずしも最適な構造になっていなかったと考えられます。

 

「たいげい」は最初からスターリングエンジンを搭載せず、リチュウムイオン電池のみを動力源とすることで船体などが設計されていますから、より効率的な船体の構造になっているはずです。

 

たいげい進水式
海幕HPから引用

被探知防止、耐衝撃潜水艦構造による静粛化

技術研究本部でおこなわれた「被探知防止・耐衝撃潜水艦構造の研究」として開発された、低雑音化・耐衝撃特性向上を図るための振動・衝撃を緩和する浮き甲板(フローティング・デッキ)の採用、音波吸収材の最適装備、静粛性の高い推進スクリュウの採用などにより、そうりゅう型よりも更に静粛化が進んでいるものと考えられます。

 

在来のスクリュウ方式をとっているのか、あるいは2016年度に開発が終った「リム駆動推進機」かは不明ですが

「リム駆動推進機」であればスクリュウ全体が筒状のダクトで覆われ、スクリュウ翼端に回転子を配する構造になり、キャビテーション・振動が低減し静粛性が向上していることになります。

「先進推進システムの構成要素技術の研究」外部評価報告書

 

リム駆動とは、モーターの駆動力をスクリューの軸に伝えるのではなく、スクリューの羽の先端に繋がっている外側のリム部を回転させる仕組み。

船舶や潜水艦では推進軸が回転するときの振動音が騒音の大きな原因になっているので、推進軸が無くなればかなり騒音が低下します。

 

フローティングデッキ:音的に水中に浮いてしまった、船体と切り離された構造

リム推進の仕組み

 

居住区の女性自衛官対応仕様

潜水艦への女性自衛官配置制限の解除を受けて、居住区内に仕切り等を設けて女性用寝室を確保するとともに、シャワー室の通路にカーテンを設けるなど、女性自衛官の勤務に対応した艤装が行われています。

 

機 関

前の方でも述べたとおり、そうりゅう型ではもともとスターリングエンジン&鉛蓄電池を搭載する前提で設計されていましたが「たいげい」では最初からリチュウムイオン電池を搭載する前提で設計されています。

 

ここでポイントとなるのは平成22~26年度で試作、平成26・27年度で試験が行われた「スノーケル発電システム」の開発で、従来の鉛蓄電池はその特性から大電流による急速充電が困難であったものが、

リチュウムイオン電池は大きな電流による継続的な充電に対応できるというリチウムイオン蓄電池の特性を活かして、「たいげい」は従来より高出力かつ急激な負荷の変動に対応できるディーゼルエンジンと発電機を装備しています。

 

また、給排気量の増大に対応したシュノーケル・マストが開発され装備されています。

後期そうりゅう型でリチュウムイオン電池を採用し、バッテリーの容量が増えたことで、潜航時間が増大したことが大きなメリットとしていわれていますが

さらに、大電流による急速充電が出来るということは、全体の電池容量が増大したこと以上に在来型の潜水艦にとって重要なポイントになります。

 

というのは、潜水艦といえどもずっと潜りっぱなしという事は無く、随時、状況をみてバッテリーの充電を行っています。

そしてこの充電(エンジンを回してシュノーケルを海上に露出)している時がもっとも対潜兵力に探知されやすい時間でもあり、

この充電に要する時間が従来の鉛蓄電池を使った潜水艦の半分とか1/4とかになれば探知される確率が格段に下がることになります。

 

装 備

「たいげい」では光ファイバー技術を用いた新型の高性能ソナーシステムを装備して、探知能力が向上しています。

「たいげい」にはそうりゅう型に搭載されていたZQQ-7を改良したZQQ-8 統合ソナーが搭載されます。

 

艦首型アレイのコンフォーマル化および側面型アレイの吸音材一体面受波器化による開口拡大(感度向上)、

光ファイバー受波アレイ技術による曳航型アレイの指向性補償処理による探知能力の向上、

信号処理部における異種ソナー間の探知情報の自動統合アルゴリズムの構築等による探知情報自動統合化を図ったもの、

であるとされています。

 

兵 装

兵装は533mm魚雷発射管×6門(18式/89式魚雷、ハープーンUSM)となっており、開発中であった最新式の18式魚雷が装備されています。

 

後継艦

現在の所

2番艦:SS-514(川崎重工で建造中)2021進水予定

3番艦:SS-515(三菱重工で建造中)2022進水予定

たいげいの概要
海幕広報室

まとめ

「たいげい」の目玉はリチュウムイオン電池搭載、というとそうりゅう型の後期型で既に搭載が始まっているから目新しさは無いように感じる人もいるでしょう。

 

しかし、そうりゅう型の充電システムでは鉛蓄電池を想定した充電システムであり、多少の修正はされていたでしょうが

「たいげい」では本格的にリチュウムイオン電池を充電するための充電システムが装備されていますからリチュウムイオン電池の能力をそうりゅう型以上に充分発揮出来る態勢になっているものと考えられます。

 

また、非探知防止(静粛化)のための船体構造や敵を探知するためのソーナシステム、C4Iシステムも大幅に性能が向上していますから

そうりゅう型に比べて、見た目や印象以上に性能が向上していると推定されます。

 

これまでも、通常型潜水艦では突出した能力を持っているといわれていた海自の潜水艦ですが「たいげい」の登場で、さらに海自の潜水艦の能力が世界TOPクラスの地位を万全にしてくれるものと思います。

 

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