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韓国海軍艦艇による海自P-1への射撃管制レーダー照射事件を解説

最新の動向

 

韓国海軍所属の広開土大王級の駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機P-1に射撃管制レーダーを照射したという事件について、全般や背景、なぜレーダーを照射したのかなどを分析してみた結果を解説します。

 

追記:その後の状況を分析した結果、韓国の艦艇のレーダー照射は、何らかの不都合な行動を隠蔽しようとした結果であると考えます。詳しくは記事中段参照

 

2020.5.2追記

ユーチューブで面白い解析をしている動画がありましたのでアップしておきます。かなり専門的な知識をお持ちの方では無いかと思います。


レーダー照射事件を起こした韓国海軍広開土大王級の駆逐艦

韓国艦艇によるレーダー照射事件の全般の流れ

まずは、この事件を理解し、整理するために今回の事件の流れを時系列で簡単に説明します。

 

12月20日

午後3時頃、能登半島沖において海上自衛隊第4航空群所属P-1(厚木)が韓国軍の駆逐艦から数分間、複数回に渡りレーダーが照射された。

現場は日本の排他的経済水域内の公海上で、竹島から東側200km程度、能登半島の北西200km程度離れたところ(魚屋が推定した位置)

P-1は照射を受けた後、韓国艦艇に無線で意図を問い合わせたが応答はなかった。

 

12月21日

岩屋毅防衛大臣が記者会見を開き事件の発生を発表し、記者団に「韓国側の意図ははっきりと分からない」としつつ、「極めて危険な行為だ」と批判。

 

12月22日

防衛省は今回の事件について、

慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断し、広範囲の捜索に適するものではなく、火器管制レーダーの照射は不測の事態を招きかねない危険な行為であり、

仮に遭難船舶を捜索するためであっても、周囲に位置する船舶や航空機との関係において非常に危険な行為で、

韓国も採択しているCUES(洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準:後述)において、火器管制レーダーの照射は船舶又は航空機に遭遇した場合には控えるべき動作として挙げられていることをあげ、

韓国側に再発防止を強く求めて行くことを発表した。

 

これに対して、韓国は「火器管制用レーダーを作動させたことは事実だが、日本の哨戒機を狙う意図は全くなかった」と表明。

 

12月24日

韓国政府は今までの説明から一転して、「レーダー照射を行った事実はない」として日本が事実と異なる発表を行った事を批判した。

日本政府は照射した証拠があると反論している。

 

12月28日

防衛省はP-1が撮影した、機内からのビデオ映像を公表

 

2019年1月2日

韓国国防部は、P-1が駆逐艦に対して「威嚇的な低空飛行」をしたとして、謝罪を求める声明を発表

韓国艦艇が海自哨戒機にレーダー照射をした理由を分析

そもそも海自P-1はなぜこの海域を飛行していたのか

防衛省の発表によれば、P-1は通常の監視任務中だったということですので、たまたま監視飛行をしている最中に、韓国の艦艇を発見し、状況を確認したということになります。

 

日本周辺海域では全域を、毎日、海自の固定翼哨戒機(P-1、P-3C)が監視飛行を行って、不審な船舶や外国の艦艇などの状況を確認していますから、特におかしな点は無く、毎日行っている通常の監視任務中であったのだと思います。

 

海上自衛隊が行っている海上監視エリア
防衛白書から引用

韓国の艦艇はなぜこの海域にいたのか

韓国政府の発表によれば、北朝鮮の遭難漁船を捜索していたということで、実際に、北朝鮮の遭難漁船員を救助していますから、これもその通りなのでしょう。

韓国海軍艦艇が海自P-1にレーダー照射した海域

 

韓国の艦艇はP-1哨戒機からの無線の呼びかけに答えなかった理由

海自P-1は、射撃管制レーダー照射が行われた後、国際VHF(156.8MHz)と緊急周波数(121.5MHz及び243MHz)の計3つの周波数を用いて、「韓国海軍艦艇、艦番号971(KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971)」と英語で計3回呼びかけ、レーダー照射の意図の確認を試みましたが、韓国艦艇からの応答はありませんでした。

韓国側の主張としては、無線が微弱で聞こえなかったとしています。

 

可能性としては

・海自P-1の無線機の調子が悪かった

・当時の電波通達の状況が悪く、韓国艦艇に伝わらなかった

・韓国海軍艦艇が緊急周波数などをモニターしていなかった

・聞こえていたが無視をした

この4つの可能性が考えられますが

 

海自P-1の無線機の調子が悪かったについては、海自P-1は飛行中、レーダーサイトなどと無線通信を行っていますし、行き帰りに航空交通管制機関ともコンタクトしていると思われますので

緊急周波数(UHF)と国際VHFの両方の無線機の調子が悪かったとは考えにくいでしょう

 

また、UHF2波、VHF1波で呼びかけていること、比較的近距離で呼びかけていること、海自の発表した写真から当時の天候が、それほど悪かったとも思えないことから、電波の到達状況が悪かったということも考えにくいでしょう

 

また、韓国海軍の艦艇は遭難した北朝鮮の船を捜索していたということですから、遭難時などに使われる緊急周波数などをモニターしていなかったというのは、ちょっと考えられません

ですから、韓国海軍としては、やはりちょっとまずいと考えたのか

呼びかけに対して応答しなかった(出来なかった)可能性が高いのでは無いかと思います。

 

海上衝突回避規範に定める通信手段
海上衝突回避規範に定める通信手段

 

海上衝突回避規範( Code for Unplanned Encounters at Sea:CUES)

2014年に西太平洋海軍シンポジュウム(毎年開催)で合意された規範で

中国、韓国を含む21カ国で合意した規範

主な内容としては、他国艦船と予期せぬ遭遇をした場合「無線で行動目的を伝え合う」「射撃管制用レーダーを相手艦船に一方的に照射しない」などがある。

 

原文(英文)
http://www.jag.navy.mil/distrib/instructions/CUES_2014.pdf

2.8.1a項参照

 

この規範は中国艦船の異常接近や火器管制レーダーの照射などが相次いだために、海上での偶発的衝突を防ぐための「マナー」として示された規範です。

 

因みに主な項目としては以下の5項目

・砲やミサイルの照準、火器管制レーダーの照射、魚雷発射管やその他の武器を他の艦船や航空機がいる方向に向けない。

・遭難時などを除いて、信号弾やミサイル、ロケット、各種火器などの物体を艦船や航空機に向かって放出しない。

・艦橋や航空機の操縦席を(探照灯や照明などで)照らさない。

・レーザーを使用し、乗員や艦船の装備に悪影響をおよぼすような行為をしない。

・アクロバット飛行や模擬攻撃を艦船の付近で行わない。

 

通信手段についても、周波数など詳しく定められています。

 

参加国
日本・米国・カナダ・中国・フランス・フィリピン・ロシア・韓国・タイ・ベトナム・豪州・ブルネイ・カンボジア・チリ・マレーシア・ニュージーランド・パプアニューギニア・ペルー・シンガポール・トンガ・インドネシア

 

注意するのは、あくまで規範として制定されている事項で、「国際海上衝突予防規則(COLREG: Convention On the InternationaL REGulations for Preventing Collisions at Sea)」とは違って、本規範は国際的な会議により制定されたわけではないという点です。

自衛隊や米軍であれば、厳しく管理されており、規則に反することはやらないよう、教育や指導がしっかりなされていますが、後進国などであれば、モラルの低い兵士や知識のレベルの低い艦長がいる可能性はあります。

 

広開土大王級駆逐艦
韓国広開土大王級駆逐艦

 

韓国の軍艦はせどりをやっていたのか

SNSなどをみていると、韓国の軍艦や海上警察の船は北朝鮮の漁船とせどりをやっていたのだろうという論調がありますが

さすがに海軍艦艇や、政府公船が、しかも洋上のど真ん中(やるならもっと北朝鮮に近い所?)でせどりをやっていたというのはちょっとあり得ないような気がします。

 

とはいうものの、海域からして、北朝鮮の漁船が密漁をやっていた可能性もあり

注:エリアは日本の排他的経済水域ですが、竹島の領土主張の関係で、韓国の主張する排他的経済水域とダブっているエリアですから(中間水域)韓国側からしても密漁船という位置づけになります。

 

密漁船といえども遭難船舶を救助することは当然のことなのですが、状況を確認しに来た第3国(日本)の哨戒機に、いきなり射撃管制レーダーを照射して追い払おうとした行為からすると、見られてはまずい、見られたくない何らかの行為を行っていた可能性はないとは言えません。

 

韓国軍のドクト防衛訓練
韓国軍のドクト防衛訓練

艦長が反日意識に燃えた跳ね返りの行動だった?

取り敢えず、現時点で可能性がありそうなのは、艦長が反日意識に燃えていて、思わず、敵対行動を取ってしまったというものです。
(常識的には考えにくいですが、韓国の場合は???)

 

しかも韓国海軍は13日から14日まで日韓が領有権を争う竹島(韓国名・独島〈トクト〉)を防衛する演習を行っています。

事件が発生したのは20日ですから、レーダーを照射していた広開土大王DDH-971が、演習に参加した直後だった可能性は高いでしょう。

 

演習の期間中、自衛隊の航空機は、当然演習場の敵機ですから、接近してくればロックオン(射撃管制レーダーの照射)→ミサイルの発射という手順になります。

 

演習のノリそのままで、20日の事件につながったというのもあり得る話なのかもしれません。

 

海自P-1が低空飛行を行ったからレーダー照射したのか

年が明けて韓国は、海自P-1が低空で威嚇飛行したと、日本を非難し始めました。

私からすると

「威嚇されたから射撃管制レーダーを照射して報復したんかい」

って言いたくなりますが

でもレーダー照射はしていない、無線でも呼びかけていないというのは、やはり、どう考えても、理屈に合わないですね

 

 

下記項目2019.1.11追記

韓国海軍の広開土大王級駆逐艦は見られてはまずい行為を行っていた?

その後の報道や韓国政府の反応その他を分析勘案すると、やはり韓国艦艇は何らかの見られてはまずい行為を行っていた可能性が高いと考えます。

当初は、竹島防衛訓練を行った直後であった事から、反日意識に燃えた跳ねっ返り乗員が勢い余って、くらいに考えていましたが、常識的に考えてやはりその可能性は低いと思います。

 

もちろん直接的な証拠はありませんが、状況を分析すれば、自ずと結論は1つの可能性に集約されるのではないでしょうか

なぜそのように判断したのか、背景的な状況証拠を列挙してみます。

 

韓国の艦艇が感情に駆られて国際問題になりかねないことをしたとは考えにくい

韓国海軍と海上自衛隊は共同訓練や親善訪問を行うことも有り、また一部の士官は毎年海上自衛隊の幹部学校等に留学しています。

しかも海軍という軍種の特性・・大自然や、機械(艦艇、航空機)を相手にする軍種ですから、精神論や感情論よりも論理や国際法などが重要視される傾向があります。

 

ですから、一時の感情に駆られて暴走行動を行ったということはやはりちょっと考えづらいと思います。

韓国観艦式における旭日旗の問題も、韓国海軍が言い出したことでは無く、国民世論を背景に、韓国政府が言い出したことなのでしょう。

 

なぜあの場所に韓国艦艇と韓国の海上警察の船が一緒にいたのか

事件が起こった海域の正確な場所は公表されていませんが、日韓の中間よりは、結構日本側に近い海域だと思われます。

そこになぜ、偶然に?韓国の艦艇と海上警察の船がいたのか

 

因みに、日本の海上保安庁は遭難信号を受信していません。

それなのになぜ、どのように韓国は北朝鮮の漁船の遭難信号を受信したのか、あるいは遭難を知ったのか

 

微弱な遭難信号を発信した遭難漁船の近くにいたということであれば、韓国の領海からかなり離れた日本に近い海域に「たまたま」韓国の艦艇と海上警察の船がなぜ同時にいたのでしょうか、疑問が残ります。

 

射撃管制レーダーを照射したのは近寄られたくないから?

防衛省の発表した映像から、北朝鮮の漁船はすでに発見され、救助のためのボートも近づいている様子でした。

海自のP-1が接近してもなんら問題は無く、逆に、自らの救難活動を世界にアピールできる場でもあったはずです(まあ、北朝鮮の漁船を救助しているという負い目はあったかもしれません)

 

それにもかかわらず、国際協定に違反してまでレーダーを照射して海自のP-1哨戒機を追い払おうとした

・・・常識的に考えて

やってることを見られたくない

まさか本当に威嚇射撃をするわけにもいかないから、あわててレーダーを照射したと考えると、全ての韓国側の動きが腑に落ちます。

 

なぜ韓国側は漁船を救助しているところを見られたくなかったのか

この事件の当初からSNSなどでは「せどり」をやっていたなどとまことしやかにささやかれていましたが、さすがにそれは無いでしょう

しかし、見られたくなかったという前提で考えると

 

・ガス欠になった漁船に燃料を補給しようとしていた

・そもそも、遭難情報は、北朝鮮の依頼で韓国上層部から救助指令が出ていた

などの可能性が考えられます。

 

特に韓国の艦艇と、海上警察の船が突然あの場所(北朝鮮の漁船が遭難した場所)にあらわれて救助活動を行っていたということは、あらかじめ遭難した場所を知っていた可能性が高いです。

 

それも単なる救助なら人道的な行為ですから非難される可能性は低いのに、見られたくなかったと言うことは、単なる遭難漁船の救助ではなく、さらに積極的な支援行動を行っていた(行おうとしていた)可能性があります。

・給油や食糧補給

・北朝鮮近海への曳航

など

 

結論(魚屋太平の推定)

韓国の艦艇と海上警察は、日本の哨戒機(もちろん日本ばかりでなくその他の外国の哨戒機でも同じであったかもしれません)に見られたくない何らかの行為を行っていた。

そのまずい場面を見られそうに(見られた)なったので慌てて、レーダーを照射して追い払おうとした

あるいは、証拠隠滅のための時間稼ぎをしようとした。

と考えるのが自然では無いかと思います。

 

後日談

この際に救助された北朝鮮の漁船員は、即日北朝鮮に送還されたということから、北朝鮮を脱北した人間を、北朝鮮からの依頼により、追跡、確保して、北朝鮮に返還した可能性があると考えられます。

通常であれば、韓国に亡命の意思があるかどうか、犯罪を犯してないかどうかなどの取り調べを行うはずが、そのような様子はなく、即時帰国させていることからも何らかの南北政府間の事前の意思疎通があったとしか考えられません。

 

海自P-1
海自P-1

韓国海軍の広開土大王級駆逐艦とは

全 般

広開土大王級駆逐艦(こうかいどだいおうきゅう:英: Kwanggaeto the Great class destroyer)(KDX-1)は、大韓民国海軍初の国産駆逐艦です。

広開土大王級駆逐艦

Y字型の変わった煙突が目を引きます。

1995~1998年にかけて建造され、現在3隻が就役中

基準排水量:3,200t

満載排水量:3,917t

全長、全幅、喫水 135.4×14.2×4.2m

 

主要兵装

HARPOON×8(4連装発射機×2)

SEA SPARROW Mk48 VLS×16セル

127mm単装砲×1

30mm Goalkeeper(CIWS)×2

324mm 3連装魚雷発射管×2

Super Lynxヘリコプター×1

 

機 関

CODOG(コンバインド・ディーゼル・オア・ガスタービン)

ディーゼル主機×2

ガスタービン主機×2

速 力 30ノット

 

広開土大王(クァンゲト・デワン)級駆逐艦の搭載レーダー

MW-08

捕捉追尾用の三次元レーダー。

空中目標の高度も同時に測定できる。基本的には低空を飛ぶ目標への対空用だが、対水上モードもあり主砲の射撃管制も可能。稼働中は360度回転しながら全方位に電波を照射する。周波数はCバンド。

STIR-180

火器管制レーダー。

対空ミサイルの誘導と主砲の射撃管制を行う。他のレーダーの情報を得てから目標に指向するので、稼働中でも常時回転は行わない。周波数はXバンドおよびKバンド。
(今回P-1が照射されたとして問題になっているのはこのレーダーです)

SPS-49

対空捜索用の二次元レーダー。
高い高度を飛ぶ空中目標への遠距離警戒用。周波数はLバンド。

通常はこのレーダーで航空機などを捜索探知し、接近してくる航空機の詳細な行動を把握する場合には前述のMW-08を使用し

さらに、戦時など、接近してくる航空機を撃墜する時などにSTIR-180(火器管制レーダー)を航空機にピンポイントで照射(ロックオン)するという流れになります。

SPS-95K

対水上捜索レーダー。

周波数はCバンド。

北朝鮮の遭難漁船を捜索するのであれば、このレーダーを使用するはずです。

対空レーダーは、艦艇周辺の航空機の動静把握には使われていますが

基本的に、よほどのことがない限り対空レーダーを漁船捜索に使うということは考えにくいです(そもそも、対空レーダーは航空機などを探知するためのものです)

フライキャッチャー

近接防御兵器ゴールキーパーの30mmガトリング機関砲(対空機関砲)と一体化した小型レーダーシステム。周波数はIバンドおよびKバンド。

まとめ

海自P-1が韓国艦艇からのレーダー照射を誤認したという可能性もありますが

データーが残っており、陸上でも精密に分析をしているはずですから、射撃管制レーダーの照射自体がなかったということはちょっと考えづらいです。

 

私が考える可能性としては

・前の週の演習の直後であった為に、そのままのノリでつい電波を発射してしまった
(場合によっては、射撃指揮官が、いつもの手順どおりに?間違えてやってしまった)

・演習も含め艦内の反日感情が高まっていてついつい、過激な行動をやってしまった

・何らかの見られてはまずい行為を行っていた

などが考えられます。

 

いずれにしろ、ちょっとしたミスとして、

「以後気を付けます」

と言っておけば済む話を

逆ギレして、さらには相手国を非難するような発言にまで及んでいることに何か暗澹たる気持ちになってしまいます。

 

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